奪還

生きていればいろんなことがある。

いろんなことがあって、いつの間にかいろいろなものを得ていることがある。

ただ何を得たのか具体的には思い出せない。

成長とか、充実感とか、自信とか。人生が上手くいっているときにはいろいろなものを得ていると思う。

だけどひとたび人生がレールから外れたら上手くいっていたときに持っていたものが全て失われた気分になる。いや実際に失っている。

だから年を取ると、上手くいっていた若い頃の自分が羨ましくなる。

若い時は恐れるものなんてほとんど無かった。少し人生のレールから外れても、どうにかなる。と信じていたし、案外どうにかなっていた。

年を取るにつれて、次第に人生の軌道修正が難しくなった。道を踏み外した時にすぐにちゃんとしたレールに戻れていたのに、今じゃ戻るのに苦労するし、下手したら戻れない気もしている。

若い間には沢山失敗しなさいと教えられたが、それは年をとると失敗したら軌道修正が出来ないからだと最近になって感じた。

昔のようには戻れない。それが年を取るってことなんだろうか。

昔はすぐに取り戻せていたものが、今じゃ取り戻せる気がしない。年を取れば取るほど自信は失われていく。

なぜ自信を失った。その答えは簡単だった。いろいろなものを失ったから。今持っているものが自分には何もないから。だから何もない空っぽの自分に自信が備わっているわけもない。

失って失った。取り戻せる気もしない。だけど悔しい。

年をとればそれだけで社会的地位が確立されていく。だけど自分にはそれがない。だから自分の望むものも手に入れられない。人の目に映る自分は社会的には死んでいる屍のようなものだ。

社会は地位、名誉、金を持つものが力を持つ。だからそれらのものを持たない自分は最底辺に映るだろう。

悔しいと思う。だけどこれをどうすればいいかも分からない。どう行動すればいいかも分からない。下手に動くとさらにレールから逸れる。いやすでにレールから脱線しているから、この先下手に動いてもさほど変わらないかもしれないが。

だけど、もう失敗は出来ないと自分に言い聞かせる。これ以上の失敗は許されない。もうちゃんと生きていきたい。

空っぽの自分が生きる返るためには、今この瞬間、瞬間を本気で駆け抜けないといけない。

失ったからこそ、失ったものを取り戻さないと。人間追い詰められてからが本番だ。