休職そして退職へ

休職してから116日目の朝。

天気は快晴。

目覚まし時計より早く目覚める。

時間は朝7時。

会社に行かなくていい毎日。

順風満帆。

ノーストレスライフ。

 

夢のような穏やかな日々…のはずである。

ある1つのことを除けば…。

 

それは、

いつになったら自分は動き出すのか、

という事だ。

 

このままの生活を送っていたら、

間違いなく

このままの生活を続けてしまうであろう。

だって楽だから。

何も考えない日々。

いや、何も考えたくなかった。

 

何も考えなければ、何も不安にならない。

何も考えないから、悩みもない。

だけどこのままでいいのか?

やっぱり良くない。

 

もうこんな生活を終わらせよう。

それがすべての始まりになった。

 

休職4ヶ月。

さぁ、そろそろケジメをつけよう。

ここから始め直そう。

 

朝の散歩を終えた僕は、

今、休職中の会社に電話をかけるために、

電話帳を開く。

 

さぁ、電話するぞ。

早く通話ボタンを押そう。

押せば、僕は行動するしか無くなる。

早く押せ…自分。

 

会社に電話をするだけなのに、

2時間近くためらった。

言い訳させてもらうなら、

こんな冒頭になるだろう。

「無理もない。

休職中の会社に退職の意思を

伝えようとしているのだから。」と。

 

でも、このまま会社に席だけ残すことに、

どんな意味があるのだろうか。

会社に席を残しておけば、

なんとなく安心して

いられるだけじゃないか。

 

それに甘んじて、何もしない、空虚な日々。

そんな空白の日々から脱するために、

今日、僕は退職の意思を伝えるんだ。

 

考えてみれば、

休職したいという申し出の方が、

死ぬほど緊張した。

 

休職から退職したいという申し出は、

それほどの緊張は無いはずだ。

休職からの退職は、

そんなに珍しいことでは無いのだから。

 

そもそも僕は会社を

退職しないといけない理由があった。

 

それは、障害を持つものが

援助を受けることが出来る、

就労移行支援というサービスを受けながら、

就職活動をしたかったから。

 

その就労移行支援の援助を受けるための

条件に、失業者という認定が必要だった。

 

今の仕事を休職しながら、

自力での就職活動には、不安があった。

漠然な不安が。

 

支援を受けながらの就職活動にも

興味があった。

いや、

そんな興味があるだけでいいのかは、

はなただ疑問を覚えるが。

 

が。

がしかしだ。

 

最後に自分の進むべき行動。

自分の信じることを決めること。

それらに最後に決断を下すのは、

他ならぬ自分でなければいけない。

誰かに決められるものではない。

 

行動を起こしたいなら、行動するしかない。

それが人として、生まれた時から、

一人一人に貰える唯一の特権。

自分達に与えられた自由というもんだろう。

 

…能書きはこれでおしまい。

さぁ、はじめよう。

僕は震える手で、通話ボタンを押した。

 

行動、思考、決断。

 

それらは、能動的でなければいけない。

受け身では必ずどれもおぼつかない。

 

会社の事務員の人が、電話に出る。

僕は、会社の人事担当の人を

呼んでもらった。

 

変わる人事担当。

もう後戻りは出来ない、

しないし、

するつもりもない。

 

僕は、詰まる言葉を吐き出した。

 

申し訳ないですが、

病院との相談の結果、

会社を退職することに決めました。と。

 

ああ、言った。

言ってやったよ…言っちゃたよ…

 

まぁ、その後はあっけなかった。

退職はあっけなく承諾された。

後日、必要な書類が

家に届く手はずになった。

 

始まりは劇的で、終わりはあっけなく。

仕事とは、そんなものなのだろう。

いや、そうだと思いたい。

 

僕は、とうとう退職することになった。

このご時世で退職する人間は、

世間では間違いなく、

馬鹿な奴だと思われるだろう。

うん、否定はしない。

 

だけど、行動しなければ何も始まらない、

変わらない。そう信じたい。

 

会社との連絡を終えた僕は、

すぐに就労移行支援に、

申込みの電話をかけた。

今度はすぐに通話ボタンを押せる。

迷いがなくなったから。

 

申込みもあっけなく完了する。

ちょっと手続にはあるみたいだが。

 

仕事を失ったが、自分の進む道を得る。

 

人生って失って、

得ての繰り返しのなのかな。

どんなに何かを得た気分でいても、

知らないところで何かを失っているはずだ。

それは何に対してもそうだろう。

 

失っても何かを得ているのも確かだ。

いや、確かなんだって

思いたいだけなのかもしれない。

 

ただ、この日から

僕は新たな人生を得たと

信じずにはいられなかった。