新卒で入社した会社を辞めるまで fin

最後の2週間。

僕は特に会社で怒られることがなくなった。

去っていく人間に、

今の仕事のことで怒ったり、

新たに新しいことをさせる

必要がないからだ。

 

おっさん2人も、

使えない新人の僕の世話をするのも

これまでだと思うと

少し安心したのかもしれない。

 

僕が退職するまで、

最後の1週間になった時、

メガネをかけたおっさんは、

次にどんな仕事に行くのと尋ねてきた。

 

僕は、次はライン作業をする仕事に就くと

話すと、遊びのような仕事に行くんだなと、

少し笑いながら茶化してくる。

職人というのは、

本当にストレートに言葉をぶつけてくる。

もう少し気の利いた言葉の

1つや2つ掛けてくれないものだろうか。

まぁもう終わることだ、

何を言われても構わない。

 

メガネのおっさんの話は続く。

 

俺がこの仕事についているのは、

金のためだ。

若い頃はどんな生き方でも

それなりにはなんとかなるだろう。

でもな、いつか、

金が必要になったら、

結局は地獄のような仕事に戻らないと

行けない日が来る。

結婚とかが分かりやすいな。

いつか、金が必要になったら、また、

戻って来ればいい。

まぁ、その時に俺がいるかは

分からないけどな。ハッハッハ。

 

この言葉をかけられた時、

僕は意地でもこんな職場に

二度と戻るかと思っていた。

 

だけど現実は、

おっさんの言っていることが正しく、

学の無いものには、非情な世界である。

楽がしたいなら楽は出来るが、

お金に苦労する。

地獄かと思われる世界(仕事)に挑めば、

心は壊されるかもしれないが、

その分、生活の安定(お金)は得られる。

 

きっと生き方は、

何を代償に払うかで決まるのだと思う。

何も失わないで生きていけるほど

世界は甘くない。

あれもこれも得ていると思われる人達は、

若い頃に、それ相応の支払いを

済ませている。

時間だって代償に違いないのだから。

 

僕は、地獄から抜け出すために、

生活の安定を捨てたようなものだった。

学が無いのに、楽だけを選んだから。

僕がおっさんの言葉を理解したのは

10年後の今になってからだ。

 

僕が得た教訓は…

男として生まれたなら、

一人で生きる自信があるなら楽をしろ。

結婚したいなら地獄を見ろ。

という事だった。

 

一人は寂しいだろうが、

お金は最低限でいい。

誰かと生きたいなら、

男は女を支えてやるものだ。

なら男の僕等は、

2人の生活の安定の為に

お金を稼がなければならない。

子供が出来ればその分だけ

稼がないといけない。

 

このことに気づくのに

こんなに遠回りしてしまった。

僕が次に転職した会社はまさに、楽だけだ。

そんな不安定な安心に

長い間しがみつく事もできなかった。

転職先の企業は1年後倒産することになる。

が、このお話は別の機会にしよう。

 

こうして僕は新卒の会社を

1年ちょっとで退職したのである。

 

 

退職まで、読んでいただいて

ありがとうございました。