新卒で入社した会社を辞めるまで part.5

 

現場に派遣されてから

1ヶ月程経ったある日。

今日は安全パトロール

来るからちゃんとやれよ。

とおっさんから言われた。

 

安全パトロールとは、

決められたルールで作業をしているかの

確認に来る、親会社の保安官だ。

ルールを破り危険な行動を

しているところを見られると、

その社員の会社は今後、

親会社から仕事を回してもらえなくなる。

だからみんな会社の為にも、

安全パトロールの予定日は

かなり警戒しながら作業に当たる。

 

僕はこの1ヶ月で、金髪の兄さんから、

仕事が出来ない奴だという、

認定をもらっていたので、何度も厳しく、

いらんことだけはするなよ!

と念を押されていた。

心配しなくてもなにもしないつもりだから

安心してほしい。

 

いつもの作業場で作業していると、

綺麗な服とヘルメットを被った

おじさんたちがやって来た。

明らかに作業者の容姿ではない。

あれが安全パトロールだとすぐに分かった。

安全パトロールが来ると、

みんな作業の手を止めて、

道具を掃除し始める。

なぜいきなりみんな道具を磨き始めるのか。

それは余計なことを突っ込まれないためだ。

作業しなければ、注意されようがない。

それがここでの、

安全パトロールの凌ぎ方のようだ。

 

安全パトロールが終わり、

先輩達が休憩するぞと言うので

休憩することに。

休憩室で先輩達4人分のジュースを

買ってきてくれと、おっさんに頼まれ

小遣いを貰いジュースを買いに行く。

ジュースを買って戻ると、

金髪の兄さんが、飲み口を持つなよ!

と少し苛立って言う。

僕が飲み口を持っている手は

凄く汚れていた。

なんでおめぇは、そういうことも

分からんのな。ボーッとしすぎじゃねんか?

ジュースを買ってくるだけで

こんなに怒られる。

何をしても損する気分だ。

また気分が落ち込んでいると、

隣で一部始終を見ていた

別会社のおっさんが、

おめぇおもしろいやっちゃなぁ!

と僕のことを見て言った。

 

「俺がおめぇの親方なら

可愛がってやるのになぁ。」

そう言いながらおっさんは笑う。

馬鹿にしているだけなんだろうなと

思ったが、愛想笑いで返しておいた。

「よし、今度みんなで飲みに行こうや!」

別会社のおっさんはいきなり

そんな提案してきた。

茶髪の兄さんが、本当ですか?と喜ぶ。

ああ行こうや。とご機嫌なおっさん。

こうして次の休みに、

僕と茶髪の兄さんとおっさんと

おっさんの会社員の人達で

飲み会に行くことになった。

仕事は辛いことも多いけど、

いろいろな楽しみもあるんだなと、

ちょっと嬉しくなった。

 

だけど、この飲み会を切っ掛けに、

僕の職場への居ずらさは加速していく。

 

[退職まで残り334日]